□□ 04年11月21日
名古屋を6時22分に発つこだま491号に乗ると京都には7時10分に到着する。京都駅で山陰本線亀岡行きに乗り換え、花園駅に降りてもまだ7時42分だ。
まばらに降りる高校生に混じって、ぼくと前日名古屋にやってきたわが妻かおりさん。駅舎を出たが、駅名とは裏腹にそっけない駅前で、さて駅に着いたらコーヒーでも飲みますかという小旅行のうきうき気分がとたんに消し飛び、ヘナヘナとココロが萎えしぼむ。
あたりを見回して、どうやら一軒のコンビニでコーヒーが飲めるとわかった。ぼくとわが妻かおりさんはパンとコーヒーを買い、店内のテーブルで食べた。腹になにか入るととたんに気持ちが優しくなって、そっけない駅前だけど花園もなかなか良いところじゃん、などと思えるようになるのはぼくの特技である。
一台だけ暇そうに停車しているタクシーに乗って行き先を告げた。初老の運転手である。
「はい、どちらまで?高雄?いまは紅葉がきれいでっせ、でもな。はよいかなあきません。早いおひとは6時にはいきよります。そうです。そうせな帰ってこれんようになりますわ。今日もね、ようけ観光バスがいってます。」
「ほれ、あれ見て。もう混みよる。お客さん、こうなったら裏道いきますさかい。この道覚えておくれなはれ。ほおれ、こいで大丈夫。あの渋滞は、信号機があきまへんのや。これで抜けましたで。はいな。」
「ところでな、最近テレビで有名になった占い師おりまっしゃろ、ほれここがその人のやってる研修所や。ぎょうさん来ますで、あちこちから。それから、ほれここ。これ、その人の別邸や。おおきおまっしゃろ?どんだけかせいどるんか。想像もつきませんわ。」
「はい。着きました。楽しんでってください。ええですか。お昼にはバス停に戻ってな。そうせな、道が混んで混んで帰れんようになりまっせ。ほな、気いつけて」
高雄のバス停で降りた。おおお、紅い。秘境へとむかう石段のその手前。どでかいモミジがなかなか綺麗である。
その道を谷に向かって降りていく。つづら折りの道には観光客目当ての売店が今日の観光客を当て込み、支度の真っ最中である。谷に降りると、ようやく朝の太陽が射しはじめ、冷たい空気もさわさわと動きはじめる。
|
谷に下る道横の売店 |
|
石段を下る下る |
|
清滝川沿いの紅葉 |
神護寺に行くためには、谷底から再び参道を登っていかなければいけない。急な石段の参道。となりで何か音がすると思ったら、自分の体重に喘ぐわが妻のどっこいしょ、よっこらしょ、などというかけ声である。
途中には茶店が何軒かある、お客がもう甘酒を飲んでいたりして、わが妻はそちらに気を取られている模様。
神護寺の門を入ると赤や黄、緑と色とりどりの木々があり。多くの観光客が記念写真を撮っており。ぼくらも負けじと撮影。それにしてもぼくの写真は下手糞。マニュアルモードで撮影して自然に近い色を再現しようとするのだけど。絞りとシャッターを合わせるのにやたら時間かかる。
|
神護寺境内 |
|
多宝塔前 |
|
本堂裏 |
多宝塔で国宝の薬師如来に手を合わせ、一千年以上前に彫られた幾体もの仏像の前でしばし佇む。ココロ落ち着く。ざわめきのない空間。
さて、茶店だ。名物のもみじ餅。広島のもみじ饅頭とはかなり趣が違う。もち米をすりつぶしたようなものにこし餡がたっぷり乗っかっている。わが妻は甘酒、ぼくはコーヒー。再び静かな時間。
|
モミジ餅 |
|
落葉 |
|
橋 |
帰りは人気の少ない裏道を教えてもらって行く。表参道は人の波。こちらはまったく静か。時々アマチュアカメラマンとすれ違うだけ。
バス停で待つあいだにも自家用車が列をなしてやってくる。タクシーの運転手の言葉を信じてよかった。
仁和寺前でバスを降り、世界遺産の庭園にいく。作られた造形と構成。ぼくは落ち着かない。居心地悪い。わが妻は正座などして庭を眺めている。
再びバスで四条河原町までいく。「ひさご寿司」で箱寿司とちらし寿司。江戸前寿司とは違って、ちょっと甘くて美味しい。わが妻は、わさびで食べる寿司のほうが良いけどなあ、などといっている。
鴨川の橋から川面をのぞき込む。思ったより水が綺麗でびっくりした。
|
鴨川に写るぼくとわが妻 |