・・> mIKEの餅つきオフ記(TEXTバージョン)
gotoTentgotoHome

 

mIKEの餅つきオフ記 1
(14) 95/12/06 22:10

□□ 11月  冬

「ねえ、お餅をみんなでついて食べるっていうのは判ったけど、そのほかの食事はどうなってんの?まさか、お餅ばっかり食べてる訳にもいかないでしょ?」
「うーん、ぜーんぜん考えてない」
「考えなきゃだめじゃないの?」
「うーん、そうだなあ・・、でもなあ・・」

 椛の湖キャンプ場で行われる「餅つきオフ」を明日にひかえて、ぼくはおかーさんとコタツで話をしていた。でもなあ、オフに参加してくるメンバーの事を考えると、絶対に食事の心配なんかしなくていいのだ。これまでの経験で断言できる。ぼくはもともと料理を作るのは嫌いではない。仕事柄、料理に関する情報やうんちくの豊富な仲間と食事をする機会もある。だから、キャンプで料理することも好きだし、食べるのはもっと好きだ。でも、あのメンバーならぼくのでる幕はほとんどないだろう。とにかく、思いもかけない美味しい料理が次々と出てくるから、これは自分で作るよりそれを待っていたほうがわくわくして楽しいのである。
 だから、いつものようなキャンプの食事メニューをことさら真剣に考えていなかったのである。ただ、ダッチオーブンでスープを作ろうとは思っていた。それだって、うまくできたとしても参加者の人数からすると、一人当りではごく少量しかまかなえないだろう。それにうまくできるとは限らないし。
 ともあれ、とりあえずあまり考えることなく近所のスーパーで適当に買い物をすませ、スープの材料にはあらかじめ包丁を入れたりして、極力現地で手をかけないようにしておいた。

「ねえ、明日こっちへくるってほんとお?今、こっちじゃあ雪がちらついているよ、なんだか急に冷えてきてるよお」
 中津川市に住む妹から電話がかかってきたのは。準備も済みやれやれなどと言っているときだった。二、三日前に低気圧が通過し、ちょうど日本の上空は次の移動性高気圧がやって来ようとしている。天気は快方に向かっているはずなのだから、きっと寒気団がきているのかもしれない。いずれにしても明日は冷え込むはずだ。
「雪降ってんだって」
「えーっ!やだあ、わたし冷えるのだめ、ほら、一の瀬高原行ったときも雪降ってきたじゃない、あのときの寒さのこと、死んだって忘れない」
「ホットカーペット持ってくから」
「そこまでしてキャンプ行くの?」
「そんなのかわいいもんだよ、ライダーさんなんかコタツ作ってるらしい」
「えーっ、またなにか作ってるの?ライダーさんってまめよねえ」
実は、この会話をしているころ彼はもっとすごい物を作っていたのだが、その実物は明日のお楽しみである。

□□

 とてもよく晴れた気持ちの良い朝だった。絹のような薄い雲が高いところでさらさらと流れているようだった。
 東名高速も中央自動車道も快調に飛ばして走った。恵那山が見えてくるようになると、正面の山並みに覆い被さるように灰色の雲がたれこめ、山は白く刷毛で掃いたようになっている。雪が積もっているのだ。
「雪だーっ!」
「うーっ、さむそう」
 妹夫婦の家に立ち寄り、19号線を坂下町に向かう。来る途中に見えていた雲は晴れ、あたりは金色に輝いている感じである。いよいよ秋も終わり空気の透き通った冬が来ようとしているのである。
 木曽川にかかった真新しい架け橋を渡る。つづら折りの道を駆け登ると椛の湖の入り口ゲートに到着した。午後1時を過ぎていた。
 受付で聞けば、ぼくらは9番目の到着だという。みんなけっこうはやく到着しているんだなあ。

 湖畔の道を中に入って行くと、いたいた。まずは、まるいさ家とテールウォーク家が並んでテントを立てようとしている。手を振って挨拶してくれる。
 次のブロックに移ると、ここでは幹事のMOTO家と加門家がすでにタープを張って、くつろぎ状態に入っている。MOTO家の正面でヨーレイカドームを張っているのは、原始人さんであろう。やあやあ、と言ってMOTOさんと加門さんがやってくる。が、しかしその後ろからやけにでっかい人がこちらに向かって二人歩いてくるではないか。顔に見覚えがある。
「mIKEさん、こんちは」
「あっあれー?とりけんさんじゃあないですか、なんでここにいるんですか?」「いやー、適当にくるまを運転してたらここに着いちゃったんですよ、こちら兄貴です」
「とりたです、この前行けなくてすいません」
10月の末にぼくが東京で、ある座談会に出たときの事を言っているのである。こういうびっくりする出来事があるから、FCAMPのオフは油断がならないのである。
 次のブロックが我が家に割り当てられたサイトである。車を乗り入れると、隣にバラトンさんがいて、スクリーンテントを組み立てている。正面にいる長身で父子キャンプ風の人はじょりさんであろう。こちらはコールマンドームである。ウィングタープが風に心地よく揺れている。じょりさんの隣、ぼくらの斜め前には、いたいた、ライダー氏である。すでにタープがセットされ、豪華キッチンまわり一式が所定の位置に配置されている。
「おーい、ライダーさん、今日はそっちにおじゃましてもいいですかあー」
「いいよーぉ」

 ライダー氏はいつもの四角形タープをパシッと張り、さらに6本のポールの外側にビニールのシートを巻き付けている。いや巻き付けているというのは正しくない。どん帳のようにぶら下げているのである。タープの布地のグロメットからステンの鎖がぶら下がり、その先がフックになっている。そのフックをビニールシートにつけられた穴にひっかけ、シート全体を屋根からつり下げる方式である。あいかわらずその完成度たるや脱帽ものである。ぼくは皮のカウボーイハットを胸に、しばしその温室に対し、そしてこれをものしたライダー夫妻に敬意を表し、しばし直立の礼を行ったのであった。

 さて、やるか。ぼくは、おかーさんにすべてのmIKE家のテーブル、キッチンウェア類をそのライダーハウスにセットするように頼んだ。

                                つづく

mIKEの餅つきオフ記 2
(14) 95/12/06 22:29

□□

 さて、まずはテントを張ろうか、などと考えていると、
「こんにちはー」
と言って、テールウォーク氏の奥様、テールママがくりくり目をくりくりさせてやってきた。
「これどうぞ」
「あっ、そうかこれQSLカードですね」
テールママはアマチュア無線の資格をみごと取得されたのである。そして今回初めての交信に成功したという。
「ここまできてるのにぃ、道がわからなくてぇ、主人がね。それで、今ならだれも聞いてないから、思い切って無線やってみろっていうのね。それで、おもいきってしゃべってみたらぁ、FCAMPのみんながあーだこーだって言って教えてくれるんだけど、それでもぜんぜんわからなくてぇ、結局、山のなかのなんだかわかんない道から出てきたら、そこの受付だったのね」
 テール家は町田を午前0時に出発し、一旦、松本から乗鞍経由で高山へ行こうとしたのであるが、雪で道が通行不能。それでそこから中津川まで行って、高山往復という業を成し遂げてきているのである。このまことに恐るべき行動力の源泉は、ここにいるくりくり目のママさんから出てきているような気がするのである。

 ゆっくりとテントを立てていると、MOTOさんと加門さんがやってきて、タープ張りを手伝ってくれ、隣のバラトン邸に入っていった。
「ああ、これはいいなあ、スクリーンテントの内張りにビニールシートを張り付けるのが一番簡単かもなあ」
「でしょ、けっこう見た目も地味で」
「そうそう、外から見てもビニールが張ってあるなんて見えんもんね」
バラトン氏のこの邸宅は簡単にして実はかなり風をさえぎり、温室としての効果も高いと思われたが、いかんせん場所がメイン会場から離れすぎており、結局翌朝まで、当の本人も含めてだれも使うことなく、ただひとりぽつんと暗闇のなかに鎮座していたのであった。

 自分のところの設置が終わったので、今一度ライダー邸にいってみる。なななんと、さらにこの豪華絢爛のどん帳式タープ温室は完成度を高めていたのである。
 レクタングラータープはちょうどふつうの家の屋根の型に左右に傾斜している。したがって、柱にあたるポールに壁を巻き付けても屋根のひさしの位置と最頂部との間にできる三角形の部分は穴あき状態になってしまう。ライダー邸はこの三角形の部分にもパーツを用意し、これを完璧にふさいでしまっているのである。
 そしてさらにさらに、今回の力作、コタツテーブルもででんと屋根の下にお客のくるのを待っている。すでにこの屋敷のなかではコーヒーがポットから香ばしい香りをあげている。客の受入準備は完全に整っているのだ。

 遠く離れたまるいさ家とテール家に行ってみる。まるいさ家でも変形ヘキサゴンタープとみられるタープを温室化しているところだった。こちらも柱にシートを巻き付けている。固定の方法は簡略化されていて、シートパッチンとかいうプラスチック製のホルダーのような代物でシートをポールごとくわえ込んで固定するのである。屋根の三角部分はタープのひさしが約20センチほど下にたれているので、強風でもないかぎりまず心配なさそうである。
 テール家は自立式タープのような、あるいはロッジテントのアウターのようなもので寒さを遮断し、おでん屋を開業すべく準備している。外の3バーナーにはコールマンオーブンがセットされ、なんだか甘い匂いがしている。自慢のケーキを焼き上げようとしているのであった。

 MOTO家の前には今日の餅つきのメイン会場として、すでに大型のブルーシートのタープが張り巡らされており、雨だろうが雪だろうが雪崩だろうが、なにが降ってきても大丈夫そうな雰囲気である。質実剛健のそのタープを支えるために、あたりはどこもかしこも張り綱が張り巡らされ、酔っぱらって歩いていたらきっとどこかの綱に足を取られてひっくり返りそうである。ぼくはここを通り抜けるときは下を見据えて歩こうと思ったものである。
 隣接する加門家のロッジテントの前室に連結するように張り出されたタープもビニルシートで温室化がなされている。なかは囲炉裏風にしつらえた自作のテーブルがおいてある。その囲炉裏の中には七輪が2個、ぱちぱちといいながら赤い火を出している。この七輪風テーブルはいすにすわって、焼き物をし、熱燗でもやるにはもってこいのしろものである。さらにキッチンペーパー、シエラカップ、炭箱、クーラーボックスなどがきちんとそろえてある。
「mIKEさん、ぼくのキャンプのスタイルは万年床のイメージね」
つまり、いろんなものを座っているところから手の届く位置に配置するということである。さすがにキャンプ界の苦労人、アイデアマン加門氏の代表的グッズというべき作品群である。その囲炉裏の七輪を囲んで、くつろぎ体制に入ったママさん達がマシュマロ焼きを楽しんでおられた。これから始まる戦闘前ののんびりとしたひとときであった。


□□

 わがやの子供二人は、すでに旧知の仲となっているユータローやヤンマー兄弟達とサッカーボールで遊び始めている。子供達はしんしんと冷え込んできても、全力でサイトの中をかけまわっていた。いつも思うのだが、キャンプに来ても、ぼくらはあまり子供と遊ばない。それは、大人としてやることが多すぎて、子供達と遊んでいる暇がないのだ。でもそんな中で群をなして遊んでいる子供達を見ていると、なぜかほっとする。今回のキャンプでも子供達は、湖の畔ではしゃいでいたし、テントの中でひそひそ話をしていたし、トランプをしては景品をわけていたし、大人のビールやお酒を勝手に仕入れてきては、それをまた売りさばいて商売をしていた。もっともこの商売はどうやらおとなの空手形によって実収入には結びつかなかったようであるが。でもそんな子供達が小さな額を寄せ合ってなにかたくらみごとをしている様子は、実にほほえましく、そのままいつまでもそうしていてほしいと思うのである。今の時代には、こどもがこどもらしく遊んでいられる場所や時間がだんだん無くなっていることが残念でならない。そして、そういう機会をこういう事でなければ与えてやれない自分のことが情けない。

 むつごろう氏が来ない。午後2時には到着する予定であった。しかし3時になり4時になってもいっこうに現れない。よほどなにかがあったのかもしれない。徐々にみんなの心に不安な気持ちが現れ始めた。空は次第に暗くなって来ている。それにつれて、気温は加速度的に下がって来ているのだ。
 幹事のMOTO氏は大道具が無くてもついにイベントを始める決意をしたようである。早速、メイン会場に全員が集合して自己紹介が始まる。
 鍋とざるを使って最初の餅米が蒸し上がり、さて餅つきの始まりである。臼は石臼、杵は年季の入った木製である。加門氏が返し手を勤める。加門氏のご友人のエンドー氏も交え、ぺったんこ、すると歓声が、おーっ、続いて拍手がパチパチパチ。ぺったんこ、おーっ、パチパチパチ、が続いていく。

 ちょうどそんなころ、ようやくいつもの濃緑色ラルゴがガオガオといいながら登場した。むつ氏がやや青ざめた顔をして運転席から降りるなり、
「高速で荷物ぶちまけちゃった」
「えー?」
「ほら、ルーフキャリアに荷物乗ってないでしょお」
みれば、確かにいつもなら人数分乗っかっているはずの銀のロールマットやら、固定網にくるまれたテーブルなどが見あたらない。時間に遅れまじと高速をぶっとばして来る途中に固定していたひもなどがはずれたようだ。バックミラーに映る我が所帯道具の散乱するさまを為すすべもなく見まもるのみであったことだろう。こういう荷物をルーフに満載にして走る車の後に続くのはやめたほうがいいかなあ。ぼくは一瞬そう思ったが、むつ氏の残念そうな顔を見ると、何もなくてよかったじゃないですか、などとなぐさめるのみだった。
 さらに遅れた原因は気も動転したむつ氏が遅れてはならじと国道19号線をこれまた突っ走り、途中で左折すべきところを見逃して、はるかかなたの木曽路の山中に迷い込んでしまったことが原因と判明した。あわや自分の責任を全うできないのではないかとがっくりしているむつ氏をみんなが暖かく迎えたことはいうまでもない。

 早速、むつ氏の車からバーナーがおろされる。灯油を補給し点火。電動ファンのスイッチを入れると、ゴーゴーと威勢の良い音とともにオレンジの炎がまっすぐに立ち上っていく。釜とセイロがセットされいよいよ本格的な餅つきが開始された。おかみさん達は腕をまくり上げ、いつでもいいわよ準備オッケーよ、と、あんこ、黄粉、海苔、大根おろし、などなどをずらりと並べてすでに戦闘体制を整えたようだ。
 つぎつぎと湯気を上げてつき上がる餅、おとなもこどももかわるがわる交替して杵を振り上げる。つき上がった餅はこれまたどんどんと形が整えられていく。あたりはもうとっぷりと日が暮れて、空にはきらきらと冬の星座が銀色に輝いていた。わーっきれいな星だねえ、とだれかが歓声をあげた。みんなが一斉に空を見上げる。いつしか会場はランタンの暖かい光に包まれ、そこだけが雪のかまくらの内部のように輝いていた。

                                つづく

mIKEの餅つきオフ記 3
(14) 95/12/06 23:04

□□

 今回は冬場のオフでもあり、またサイトも区画サイトということで、みんなが集まる場所はほぼ三ヶ所に分散した。
 まず第一の場所は、加門邸の前庭。ここには加門氏と同じマンションに住まいするエンドー氏が持参した三脚式の囲炉裏がセットされ、地上30センチのところで火がたかれている。その隣には、とりた氏所有の北海道産の小型ストーブが煙突を立ててもくもくと元気な煙を吐き出している。さながらこの一角は、荒野のキャラバンご一行様貸し切り区画と化し、一升瓶、ウイスキー、ビール、ワインなどの乱舞する焚き火宴会場の様相を呈していた。とりけん氏は、女優の向井亜紀ちゃんによく似た彼女をはやくもむごくも虐げ始めているではないか。彼女は、か弱い細腕で馴れないのこぎりなどをつかって、ストーブに入れるための薪をゴキゴキと切り出している。なんとけなげなこの姿。ぼくは、彼女をひしとだきしめ、もういいんだよそんな苦労などしなくても、ぼくがしあわせにしてあげる、ああわたしの待っていたのはこの人なのだわ、二人はたがいの瞳を見つめ合い・・、むっ、いかん、これではぼくのアウトドア日誌の師匠E氏と同じ語り口調になってしまう。品位が疑われる。やめやめ。

 第二の場所は、この焚き火宴会場の向こう隣、まるいさ・テール合同屋台村である。まるいさテントでは特製テーブルに真新しい七輪がどでっと鎮座し、とんちゃんがもくもくと香ばしい煙をあげている。連結されたテールテントでは鍋からほかほかとおでんの湯気が立ちのぼっている。これで赤提灯でもぶら下げておけば、そのまま立派な本格的屋台として通用するであろう。ところがそのどちらの屋台も主たるお客は小学生なのである。店の主人の悩みの種であったことだろう。事実、ぼくが訪れたときには、とんちゃんは食べ尽くされていたし、テールテントでは子供がカードに興じているのである。勝負!などといって互いのチップを取り合っている。まさに子供にとっての治外法権、極楽浄土となっているのだ。ここで勢いをつけた子供軍団は、この後、サイト中を駆け回り、クーラーボックスなどからビールをかっぱらい、メイン会場の皿から餅をくすね取り、なんだかんだといっては法外な値段で大人に売りつける商売を始めたのである。ぼくは、けっきょく翌日に2800円という請求書を突きつけられたのである。

 第三の場所はメイン会場の裏手に位置するライダー邸である。ここはすでに書いたように、すきま風の付け入るすきのないほどみごとな密閉系を構成している。さらに驚くべきなのは、中に設置されたコタツである。いやコタツというと正確ではない。これはフォールディングテーブルの下に七輪をセットし、その熱が逃げないように、すそを思い切り長くしたテーブルクロスで全体をおおうことによって、さながらコタツのようなポカポカ空間を実現せしめるものなのである。この特製テーブルクロスがまた手の込んだ代物で、4つの角にポケット状の重石入れが作ってあり、少々の振動があっても決してずり落ちないようになっている。そしてその生地もなにやら上等な素材が使われているようなのだ。
 宴もたけなわを過ぎた頃、外部の気温は氷点下となり温室を形成しているビニールやタープの内側には水蒸気が氷の粒となって張り付いていた。が、このコタツのぬくぬくほかほかは他の追随を許さず、じょり氏をはじめ、とっかえひっかえいろんな人々が暖まっていったものである。
 テーブルの上には、これまた小型七輪がセットされ、串焼きライダー亭は商売繁盛である。さらに子供達の売りつける、見た目もめんような各種餅類がテーブルに満載されている。たとえば、豆餅のあんこ入り磯部焼き風、キムチぐるぐる団子お焼き風、黄粉と大根おろし和え風、餡入り大福バター風味、といったような、砂糖と醤油ととんがらしとバターと胡椒と、とにかくやたら和洋中の味覚の混乱したようなものばかりである。子供達がどこでそのような代物を作っていたのかはいまでは大きな謎の一つとなっている。

 宴の時間もそろそろ終焉を迎えつつあった。ぼくはライダー邸のコタツの中で、日本酒だとかバーボンだとかブランデーだとかをあいかわらず少しずつであるがちょうだいしていたのだが、ついに眠くて眠くてしかたがなくなり、とりけん氏やライダー氏と話をしつつも気がつくとそのままいすの上で寝てしまっていた。
 テントにようやく戻ると、どこからか、どうも隣のテントあたりから豪快ないびきがきこえて来るのだった。テントの中のシュラフはホットカーペットのおかげでぬくぬくしており、またたくまにぼくはぐっすりと眠ってしまった。


□□

 翌朝もよく晴れていた。気持ちの良い一日が予感できた。このキャンプ場の良さは施設も整っていることもあるが、ここからの景色にもある。湖とはるかに見える山々の稜線と、ぐわーっと広がる空とのバランスが、なにか安心感を与える。ぼくはもともと山育ちだから、海の見える風景よりもこうした環境のほうに安らぎをおぼえる。生物学的にいえば、一種のすり込みなのであろう。
「おとーさん、白鳥がいるよ!」
次男のたくやが湖面に浮かぶ水鳥を見つけてやってきた。なにか食べ物をあげてみな、といって朝食用のパンを手渡した。近くにいた子供達もワーッと歓声をあげながら走っていった。正体はただのアヒルと鴨だったのだが、帰ってきた子供達はみな、そんな生き物との遭遇に興奮していたようである。
 
 加門テントでは、バラトン氏の用意した大納言小豆によるぜんざいが振る舞われていた。ぼくはどちらかというと甘ものは不得意である。おかーさんと半分こしようといただいたぜんざいであったが、しつこくない甘さとそこはかとない塩味が絶妙なバランスで、小豆の香ばしい薫りがふくよかなぜんざいを結局一人分食べてしまったのだった。

「加門さん、お雑煮作ってくれない」
「あいよ」
加門氏に不可能の文字はない。お腹空いたなあといえばチャーハンがでてくる、お酒が欲しいといえばビア樽がでてくる、焼き物でもしたいなあといえばサザエがでてくるのである。まさにキャンプ界の玉手箱といえばこの人なのである。ぼくのリクエストに即座に応えてくれたのであった。これが今回ぼくが料理の心配をする必要が無いと思っていた最大の理由である。
 しかし、このオフ記を読んだからといって中部のオフでは食料やお酒を持っていく心配が無いなどと誤解してはいけない。加門氏の食材調達源は結局他のキャンパーの持参するありとあらゆるものなのであるからだ。だから、まず高級な食材を持参し加門氏に献上たてまつり、酒のたぐいはmIKE氏に一時預けをするのが正当なキャンプのありようなのである。このようにすれば、あなたも極楽キャンプができるのであります。
 そうはいっても、我が家の子供達にはきちっと親父の権威を誇示すべく料理を作ってたべさせねばならない。オーブンでピザドッグを焼き、インスタントのコーンスープを作って、示しをつける。

 すがすがしい朝のひとときをゆっくりと過ごし、ぼくらは早くも撤収を始めた。まわりではまるいさ氏がジュニアとともにラジコンに興じていたりしてのんびりとしている。
 むつごろう氏は、ついに再びあの伝説の手打ち蕎麦を打ち始めた。今回は製麺機はないので、本格的な純手打ちである。みんな次々とおかわりを要求している。こしがあって香りの良いこの手打ち蕎麦の味は忘れられない。ぼくは、このおおみそか、自分で蕎麦を打ってみようと考えている。それもこれもこのFCAMPのオフで打ってもらった、むつ氏の蕎麦があまりにおいしかったからである。
 テール氏がおみやげを手渡してくれる。ぼくのまわりには、あいかわらず子供借金取りがうろつき回っている。原始人氏とマックについて語り合う時間がもう少しほしかったなあ、などと思っているあいだに出発の時間になってしまった。

 最後に書かねばならないことがある。ぼくは今回、あの苦労の末に入手した固定費のかかったダッチオーブンによってワイルドスープを制作した。しかし出来あがったものは、これはもう完全な失敗作であった。火力が強すぎて結局内部の野菜が炭化し、濃厚なブイヨンができたのであったが、いかんせん焦げ臭がしてとてもみなさんに味わっていただくことはできないと判断し、すべて廃棄処分してしまったのでありました。しくしく。ただ、一部のごく幸運な人は、このスープによって作成された牛テールのボイル、スペアリブのボイルにありつけたはずである。そして、料理を始めたときだけだけれど、そのワイルドな雰囲気を楽しんでいただいたのではないかと自分では思っている。今回の失敗を教訓としてふたたび野外料理道に精進することを一人決意したmIKEであったのです。

 別れはいつも辛いものである。だからみんな静かになる。手を振る姿がまた会おうねといっている。こんどはいつ会えるのだろうか。つぎはどんな手段でみんなをあっと言わそうか、どんな料理を作ってやろうか、どこへ行けば美味しいお酒が手に入るのだろうか。楽しかった思い出がまた次への期待を生んでゆくのである。ありがとう、みなさん。またお会いしましょう。

                                おわり