仕事始めの日、会社のある日本橋人形町界隈を歩く団体がいて、どうやら日本橋七福神巡りをやっているらしかった。面白そうなので、調べてみたら家の近くの調布にも七福神があることがわかった。
それなら一度巡ってみよう。急に思い立って、わが妻と冷たい風の吹く街に飛び出した。
家から野川沿いにしばらく走ると、雑木林の道にでる。この当たりは武蔵野の面影を残していて、いたるところに大きな木が空に向かって枝を広げている。最初に向かうのは弁天様の祭られている明照院である。住宅街の中にあって境内は閑散としている。
その後、京王線仙川駅前商店街を突っ切り、寿老人が祭ってある昌翁寺に行く。甲州街道沿いにある大きなお寺だが、ここも人がいない。暖かい日差しが境内に差し込んでいる。車の喧噪も小さく聞こえる。
甲州街道を西に走り、武蔵野丘陵を登って深大寺に向かう。深大寺はさすがに人が多く、観光バスもひっきりなしに出たり入ったりしている。参道も人で一杯。蕎麦屋はどこも大勢の客が行列している。ぼくらも一軒の蕎麦屋に入ることにした。陣屋という蕎麦屋だ。もりそばと日本酒をたのんだ。
ちなみに、このそばはなかなか美味しい。ちゃんとした蕎麦の味がする。でもツユがぼく好みではなかった。ちと甘いのである。
そばを食べた後、丘を下って祇園寺に向かう。ここには福禄寿が祭ってある。ここも住宅街にあり、深大寺とは正反対な静けさの漂う寺である。
だれもいない祇園寺を後にして、甲州街道を再び横切り旧甲州街道沿いにある常性寺に行く。ここは布袋様がいるようだ。この寺は成田山の系列らしく厄払いをする人でにぎわっていた。境内には七輪に炭が熾っており、線香の煙がただよっている。
調布駅北口から伸びる布田天神参道に入ったら『ねずみ男』がいた。一反もめんも子泣きじじいもいる。そして鬼太郎もいた。
布田天神の前にある大正寺。恵比寿様が祭られているはず。しかし、静かに門を閉ざしていて中には入れなかった。その後、甲州街道を西に走り、西調布駅前の、大黒様のいる西光寺に到着。すでに日が西に傾き、鐘楼門に陽が当たる。大黒様に金運上昇と願掛けた。
こうして調布七福神巡りは終わった。およそ4時間の小さな旅。それから、まっすぐ多摩川に向かって走った。多摩川の土手に出ると陽があたりを黄金色に照らしており、あまりに明るいので思わずうわっと声をあげた。