□□ 多摩湖から家まで
多摩湖の堤防に出たら実にノンビリとした空が広がっていた。水門のドームが昔の絵のように薄くモヤの向こうに見えた。さて、ぼくはこの周回道路をここからもう一周しようとペダルに力を入れた。
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水門のドームがおぼろに見えた |
周回道路はくねくねと曲がりながら次第に高度を上げていく。道から多摩湖を見ることはできない。多摩湖は飲用水を貯めているので、無用に人が入れないようにしてあるのだ。木立の覆い被さる道を快調に飛ばす。この道、人と自転車専用の道である。2車線で左側通行。ちなみに下の写真にある左の柵の外側を自動車が走るようになっている。実に快適な道である。
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周回道路を快調に飛ばす |
多摩湖一周でおよそ11キロ。30分も経たないうちにまた元の堤防に戻った。登りもきつくないし、その割にはダウンヒルも楽しめる。いいフィールドである。
多摩湖を後にして、東大和からまっすぐ武蔵野まで続く一本の道をゆく。どこまでも続く。この道、多摩湖から都心へ水を送る導管が埋めてある。いまは周辺市民の憩いの道として整備されている。
ぼくはゆっくりと進んでいく。
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多摩湖自転車道を進む |
道はどこまでも続く。左右は民家だったり西武鉄道の線路だったり。どこも木立があり、花があり、そしてどこからともなくキンモクセイの香りが漂い、実に爽やかだった。
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まっすぐの道
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木立の道
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どこまでいっても真っ直ぐな道。このまっすぐな部分、多摩湖から終点までおよそ10キロ。ほんの短い距離の割には遠く感じる。まっすぐとはいえ、生活道路と交差するため、信号待ち、車止め、いろんな障害物があって、なかなか早く走ることができないのだ。
それもひとつの雰囲気と割り切って進む。ベンチでお菓子を食べたり、お茶を飲んだりしている人々がたくさんいる。道にはゆかりの造形物がアクセントのようにあったりする。
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石の一里塚
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公園の片隅で一休み。急いでいっても仕方ない。草の上に腰を下ろす。BD−1が、おい走ろうぜ、と囁く。
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おい、そろそろ走ろうぜ
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武蔵野で自転車道は終わる。そこから一般道を走る。玉川上水横の道をまっすぐ来ると三鷹駅に出る。さて、腹減った。時間はちょうど午後1時である。家を出たのが8時くらいだった。かれこれ5時間。水も飲んでいない。
三鷹に来たのだもの『江ぐち』でラーメン食べよう。三鷹の繁華街。BD−1を停めるのに苦労する。銀行前の歩道。車止めにBD−1をくくりつける。そして『江ぐち』へ。
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中華そば江ぐち
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チャーシュー麺を注文。カウンターの中で『タクヤ』が麺をさばく。独特のちょっと黒みがかった太い麺。美味い。味の素と醤油で作ったスープは非常にあっさりとしていて、それなりに美味い。常連がいるというのもうなづける味。昔のラーメンはこういう味だった。
(注:タクヤというのは『小説中華そば「江ぐち」』に出てくる人物であり、実在の人物ではありますが架空名の謎の人物であります。ご興味のある方は、書店でこの本を立ち読みしてください)
三鷹からは、BD−1で旅するシリーズ第13話『仙川花盛り』の道を逆にたどって家に戻った。夏が終わった仙川界隈は、静かに秋にうつろうとしているかのようであった。