□□ 94年6月
93年の夏にもう一度一ノ瀬高原に出かけた後、コールマンツーバーナーを購入した。これでやっと煮炊きが楽になるなあと安心したのもつかの間。ぼくに転勤の辞令が出た。
いったところは愛知県。豊橋の西隣りにある小坂井町というところだった。93年11月にぼくは単身で赴任した。トモカが小学校6年、タクヤは幼稚園年長組だったので、きちんと卒業してから家族は引っ越しすることにしたのである。ぼくは農家の離れを借りた。庭には柿の木、サクランボの木があり、周りは田圃と畑ばかりだった。自転車で15分も行くと三河湾に出られた。
翌年になって家族が引っ越ししてきた。新しい学校になじむまで少し時間がかかったが、自然のたくさんある場所で、マサキもタクヤも遊びに忙しかった。マサキは学校から帰ってくるとドジョウを捕りにいった。水槽を買ってドジョウを飼育するのはぼくの役目だった。
新しい生活にもようやく馴れてきたので、ぼくはキャンプをまたやろうと思った。それで会社の仲間を誘い、静岡県掛川市の奥にある居尻キャンプ場ならここの里というところにいこうということになった。
掛川ICで東名を降り北に進んでいくと川の畔にきれいな売店がある。ならここの里と書いてある。会社の仲間家族とのキャンプである。彼らはテントもシュラフも持っていないので、泊まるのはバンガローにした。場内には木造の三角形をしたバンガローがいくつも建っていて、ぼくらはそのうちの4つを借りた。初めてキャンプ場にやってきた子供などは大はしゃぎである。
バンガローの前にテーブルを広げて
タープを張ってその下でさっそくバーベキューを始めた。T君はこのためにバーベキューコンロを買ってきた。藤枝からやってきたI君はホタテ、エビ、イカを山ほど持ってきた。N君はなぜかエレキギターを持ってきた。
それからカルビ。みんなの持ってきたものを集めたら、それがやたら多くて、それだけで死にそうなほどだ。天気は良い。時間はある。ビールが美味い。子供達は、川の水をひいた水路で虹鱒のつかみ取りである。6月とはいえ、もうかなり暑く、子供もぼくらも川で遊んだ。
夜になると、近くのグランドでどこかの団体がキャンプファイアーを始めた。30人くらいの若者が輪になって、遠き山に日が落ちて、などと静かに歌っている。今時の若者気質から比べたらちょっと不気味だ。ぼくらはなるべく遠くからこの人達のことを観察していた。
おろし立てのツーバーナーがまぶしい
夜になっても子供達はなかなか寝ない。子供同士で遊びに行って帰ってこない。そのうち、子供がイモリやホタルを捕まえてにぎやかに帰ってきた。
翌朝は6時頃起床し、タープの下で朝食の準備である。スパゲティとホットケーキ。スパゲティはホタテスープ味。しかし、まだまだエビ、イカはふんだんにあって、それから再びとにかくバーベキュー。それまで家族だけでキャンプをしていたぼくらだったが、グループでやるのも悪くないな。ぼくはそう思った。これ以降、仲間家族とのキャンプが増えていった。