・・>(番外編)夏油温泉にて
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タイトル: (番外編)夏油温泉にて 年月日: 2004年10月30日 場所: 岩手県北上市和賀町岩崎新田 元湯夏油
あらすじ: 学生のとき一緒に山に行っていた仲間と夏油温泉に行った。
夏油温泉周辺は紅葉の盛だった。あいにくと天気は曇りだったが、昔の仲間と飲んで飲んで。あっという間の2日間。
テント生活番外編であります。

 アクセス
  東北新幹線北上駅から車で約50分

 宿の料金
  大人一人2食付き 8500円〜12000円

 

□□ 04年10月30日(土)

 学生のとき一緒に山に行っていた仲間とは、2年ごとに集まることにしている。

 今年の集結地は岩手県北上市の山間にある夏油温泉である。

 いまから30年前。1974年の初夏。初めてここにやってきた。今日集まる仲間も一緒だった。

 あの時ぼくたちは、大学にはいったばかりの一年生。訓練を何度か経験したあと、ようやく楽しむことを目的に先輩に連れられていった。焼石岳に登った。ちょうど水芭蕉が大きな白い花を咲かせており、ところどころ残雪があった。残雪の山は初めてだった。

 山中で一泊し、経塚山を経由して夏油温泉にたどり着いた。夏油温泉の広場にテントを張り、夏油川の河原にある露天風呂に入った。石で囲った湯船だった。

 混浴だった。ぼくらが湯船につかっていると、おばちゃんの団体がやってきた。 恥ずかしくなって逃げて出たのはぼくらのほうだった。

 そんな思い出を肴にして酒を飲むつもりだ。


蔦の絡まるブラザー軒
カプチーノが美味い

 東京から新幹線で北に向かう。仙台で途中下車し、歩いた。メインストリートを避け、昔ながらの横丁に入り込む。都市の片隅。小さな店。どんどん無くなっていく古い街。路地裏。

 広瀬通を横切って三越の角を右に曲がる。ビルの陰にひっそりと『ブラザー軒』がある。洋食と中華とカフェ。メニュー帳はずっしりと重い。ぼくはカプチーノを注文した。しばらく胸の内で高田渡の「ブラザー軒」を口ずさんだ。

 仙台はココロが落ち着く。良い街だ。


 やまびこ号で北上へ。同じ列車でここまでやってきた仲間が集まってくる。駅前には地元の仲間達が迎えにきていた。

 仲間の車に分乗して夏油温泉に向かった。あいにくと小雨。山の中に進んでいくと紅葉が目立ち始めた。夏油川へと落ち込む山の斜面はきれいな錦織りのように色づいていた。


あの川の上流に夏油温泉がある

 夏油温泉。旅館「元湯夏油」に到着した。部屋に荷物を置き、さっそく露天風呂にいった。河原の風呂。30年前の記憶と違うような気がした。記憶にあるのは、もっと広い川だった。しかし、岩を組んだ風呂のイメージは変わっていなかった。ここでおばちゃん達の軍団に遭遇したのだった。

 温い湯で身体をゆっくり温めた。午後6時前だというのにあたりは真っ暗になった。

露天風呂の入り口

 風呂から出たら宴会である。

 今日集まったのは12人。地元から5名。その他地域から7名。外国製のオートバイに乗って横浜から来たヤツもいた。

 しばらく近況を報告し会った。めでたく大学の教授になったヤツにはみんなから懐中時計を贈った。ビールがどんどん空になった。ぼくは熱燗を飲んだ。話が止まらないから飲む量も自然と増える。

 宴会場での一次会が終わり、部屋に戻って飲み直し。一升瓶が空く。相応に歳をとった連中である。苦労も多い。部下の教育、経験のない職場への異動。会社の経営、資格取得への挑戦。健康への不安、登山マラソンの試み。

 結局、30年前の思い出話はほとんどしなかった。皆、今の自分とその生活を支えることで一生懸命だった。

 次回は、仙台の奥新川あたりで芋煮会でもどうだ、ということになった。

関係者全員それなりに歳くってます

□□ 翌日


 目が覚めたとき、ぼくは旅館の浴衣と丹前を着たきりで布団の上に突っ伏していた。掛け布団もかけず寝ていた。

 しびれる頭。ふらつく足。階段を下りて露天風呂にいった。昨夜と違い、客はぼくともう一人。

 川の音を聞きながら湯船につかっていた。湯舟にかかる屋根を雨が打っていた。若い夫婦と小さな子供が3人ではいってきた。もちろん混浴だから良いのだけど。

 ぼくはまたしてもそそくさと湯船を出た。

 

川によりそうようにある露天風呂のひとつ
昨夜からの雨で川水はひどく濁っている

 美味い米飯の朝食を食べ、夏油温泉をあとにした。早い時間に東京に戻るヤツを北上駅まで送り、残りの人間は車で仙台に戻ることになった。途中、平泉中尊寺に立ち寄った。

 小雨に煙る中尊寺は紅葉が綺麗だった。お堂の仏像はひっそりとたたずんでいた。


 夕方、仙台駅に到着。地元の仲間と別れた。東京に向かう新幹線の中で、一緒に帰るヤツ2人とビールを飲んでいった。

 若い頃の仲間。気持ちがあのころに帰る。共通の記憶がピュアになっている。

 再来年といわず来年、仙台で芋煮会をしよう。テント持ってくるぞ。ぼくはそう思ったのである。

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