□□ 05年10月7日
学校に行く子供達に朝ごはんを食べさせてから東京狛江市の家を9時に出発。すでに通常の混雑になっている首都高。
四号線から江北ジャンクションに向かうと流れは一変。浦和ICから東北道を快調に走る。
西那須野ICで降りて千本松牧場で小休止。わが妻かおりさんは、ぼくの静止も聞かずパンだのチーズだのを買い込み始める。
「だってぇ、好きなんだもん。私が食べるんだからいいでしょ」
「絶対に余すなよ、余したら他のもの食べさせない」
「どうぞっ、ふんっ」
少し紅葉の始まった塩原道を西進。塩原温泉街に入る。ここで車を停め、かねてから行きたかった店に入る。
|
これがスープ入り焼きそば ソース味の麺と醤油味のスープ
|
「スープ入り焼きそば」といいます。
スープ入り焼きそばとは、ソースで味付けをした焼きそば麺がしょうゆ味のラーメンスープに浸っているという食べ物。
昔、西那須野に住んでいた頃、スキーの帰りに立ち寄りよく食べた店。およそ20年ぶりの再来ということになる。
店内には有名人らしい人の色紙が一杯ある。昔はこんなのなかった。最近けっこう人気があるらしい。さっそくスープ入り焼きそばを注文。出てきた。食べた。……………(むっ)。
麺は縮れた生麺である。そこはかとなくソース味がついている。刻みキャベツと鶏肉がはいっているのが面白い。スープはごくふつうのしょうゆ味。このコンビネーション、不思議だけど悪くないと思う。昔は美味しいと感じた味だ。ホントに好きで良く食べてました。
でも…。でもね。今日はなんかおかしいの。お口の中が。しびれてるのね。これは化学調味料の特徴ある「お味」です。相当入ってますね化学調味料。こんなだったっけ?ぼくの記憶回路がスパークしはじめます。昔の味が想い出せません。でも確かに、美味しくてよく食べに来たことだけは覚えております。
「この味って…、一昔前のインスタントラーメンと同じじゃない?麺にからんだ油の感じと安っぽいスープの味。絶対にインスタントラーメンよね。」
わが妻かおりさんが、小さい声でしっかりと言い放ちます。うなづくしかありません。昔は美味しいと感じたのだけど…。まさにインスタントな「作った」旨み味でできています。麺は美味いと思うけど…。
時代がぼくの味覚を変えたのか。味覚が文化を変えるのか。ぼくが再びこの店に来ることはないだろうと思います。楽しかった思い出と涙の別れです。
傷心を抱きつつぼくは会津に向かいます。しばらくの間ぼくの口はしびれていました。
人気の少ない道を走り桧枝岐村に入る。午後3時になっていた。
村の奥にあるキャンプ場に入る。受付の小屋からおじさんが出てきた。
「どこでもいっから適当にやってくなんしょ」
では、つつしんでテキトーにやらせてもらいます。というわけで、広いキャンプサイトのど真ん中にでかいテントを張った。威風堂々です。どっからみてもキャンプです。もうシーズンオフになってます。物好きなお客はほかに来ないでしょ。ここはひとつ目一杯自由に気ままにやらせてもらいます。
|
ぼくたちだけのテントサイト
|
|
いつものように七輪もセット ランタンも準備
|
テントを張ってから、村で唯一の食料品を売っているJAストアに買出し。さすがに山奥のスーパーだ。品数は少ない上に価格も大体3割増し。わが妻かおりさんはぶつぶつ文句を言っている。
今夜は、七輪で焼いて食べられるものを購入。味付けカルビ肉、ウィンナー、しし唐、しいたけ。明日の行動食用にソーセージ、パン。チョコ、カロリーメイト、水。それだけで4000円もした。
買出しの帰りに「燧の湯」という温泉に立ち寄る。一人600円。なかなか良い湯だ。ほんのりと硫黄のにおいがする。
|
燧の湯 内湯ひとつ 露天風呂ひとつ なかなか良いお湯
|
ここの露天風呂で、大学時代ワンゲル部の同期生にばったり出会う。
おお、なんだなんだ。どうしたんだ。俺、尾瀬行ってきた。俺も明日いくんだ。そうかそうか。宿は?民宿だ。こっちはキャンプだ。ようやるな。お互い様だ。
すっかり暖まってからキャンプ場に戻る。夜の闇が降りてくる。雨がポツリポツリと降ってきた。もし明日、朝から雨が降っていたら尾瀬沼へのハイキングは中止。その代わり喜多方まで遠征してラーメン食べよう、ということになった。
ランタンを目一杯灯し、七輪で肉など焼いて食べる。
考えてみれば、わが妻と二人でゆっくりキャンプするなんてのは、初めてかもしれない。これまでは、いつも必ず子供が一緒だったし、たいてい友達も一緒だった。あらためて感慨深い。これからはこうしたキャンプも増やしていきたいなあ。ぼくはしみじみ思ったのであった。
|
夜 雨が降ってきた 静かだ
|
福島県限定の野口英世ビールとウィスキーを飲みながら、ぼくたちは静かな夜をすごした。
わが妻が牧場で買ってきたパンとチーズは、すこぶる美味かった。
その2に続く