・・>秋 尾瀬沼へ(2)
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□□  翌日

 6時。テントから這い出る。空を見上げると朝焼けに青空が出ている。起きたくないよぉ、とシュラフのなかでうめいているわが妻をゆすり起こす。

朝
テントから這い出すと頭上に青空 よしっ!


 昨日のパンの残りに焼いたウィンナーをはさんで食べる。桧枝岐の水でいれたコーヒーが美味い。

 さあ、出発するぞぉ、尾瀬行くぞぉ。身支度を整え、車に乗る。御池の駐車場まで登っていく。尾瀬はマイカー規制をしている。桧枝岐方面からは御池までしか入れない。そこから先、沼山峠までは会津バスのシャトルに乗り換えなければいけない。片道530円。

 シャトルに乗り換え、沼山峠に向かう。山は紅葉が始まっている。

御池
シャトルバスの出発点「御池」 紅葉が始まっている

 沼山峠休憩所でトイレ。使用料100円。

 山道に入る。ここから90メートルほど高度を稼ぐ登り道だ。木道が続く。尾瀬の道はほとんど木道である。この架け替えも大変だろうなあ、と感心する。

 雨に濡れた木道は滑りやすい。20数年ぶりに山歩きをするわが妻に歩き方を教えながら行くのだけど、よそ見をしてあやうく滑って転びそうになるのはぼくのほうだった。。

林の中
山の中の木道も湿っている


 峠を越えると尾瀬沼が眼下に見えた。雲がどんよりと空を覆っているが、いよいよだなあ、という感慨が広がる。はやくあそこまで行きたい。

 木道を静かに歩いていくと視界が開け、大江湿原に出る。初夏にはニッコウキスゲが咲き誇る場所だ。

大江湿原
大江湿原に出る (クリックで拡大)

 今は茶色に変わり、草が紅葉色に染まっている。遠くを歩くハイカーが小さく見える。気持ちの良い場所だ。日本じゃないみたい、とわが妻。

 そう、ここは日本にあるけど日本じゃないかもしれない。自然を必死に守っている場所だから。ここは携帯電話も通じない別世界。

湿原
尾瀬沼東岸 長蔵小屋の屋根が見えます (クリックで拡大)

 歩き始めて一時間。長蔵小屋に到着。ここは尾瀬沼の東畔にあり、燧ケ岳を間近に見ることができる。ビジターセンターという施設もあって尾瀬の自然の様子をやさしく解説してもらえる。売店やトイレも完備しており、ビジター達の憩いの場所だ。道も交差する交通の要所になっている。必然的に人が集まる。

 ぼくらも売店の前にあるベンチで小休止。ふうっ、けっこう歩いた。ぼくは持ってきたソーセージを食べる。なぜか魚肉ソーセージが美味いのだ。ぼくは山に行くとき行動食として必ず持っていくモノがある。パン、バナナ、チョコレート、そして魚肉ソーセージだ。もう長年の習慣になっており、これだけははずせない。

 ビジターセンターで尾瀬の自然を紹介するスライドショーが始まるというので見に行った。およそ10分。尾瀬の四季を映写してくれた。20人は入る映写室。ぼくらを含めて客は5人。なかなかおもしろい。

 さて、ここでもトイレ。一回100円を入り口に置いてある料金箱に入れる。

 燧ケ岳が雲から出てきた。ぼくはこれを見に来た。結局、燧ケ岳が見えたのはこのときだけだった。

燧ヶ岳
一瞬だけ顔を出した燧ヶ岳


 尾瀬沼に沿って伸びる木道を沼尻に向かって歩いていく。コツコツと靴の音が響く。静かな林と湿原の中をくねくねと続く道だ。

木道を行く
旦那、木道は右側通行ですよ。

湿原
湿原 もっと色が紅くなると草紅葉となるそうです (クリックで拡大)

 湿原には珍しいトンボが飛んでいる。木道で羽を休めている。そっと近づく。体調およそ3センチのトンボだ。

 沼尻の休憩所に着いたら雨が激しく降り始めた。雨宿りをしながらパンを食べ小休止する。どんどん人が多くなる。

 ここでもトイレを使わせてもらう。1回200円だ。これらトイレの料金は、浄化設備のランニングコストだ。本当に高い。しかし、これが自然を維持するために今の日本では必要なのだろう。

沼尻休憩所
沼尻休憩所 ご年輩のみなさんはみな元気です

 屋根の下で合羽を着込む。沼尻休憩所にいたおよそ40人くらいの人が全員、同じように着替えている。同じような衣装になる。大したもんだ。みんな合羽ももっているしザックカバーも持っている。素人ではこうはいかない。さすがに尾瀬に来る人は違うなあ。などと妙なところで感心する。さて、もと来た道を戻る。ところが、結構、おばさんの団体が多い。しかもぼくらよりもっと年配だ。

「おばさんたち、ホントに元気だよね」
「あのね、50歳を過ぎたら女はみんな男になるの」
「……、そうなのか」
「そうよ、間違いない。だから元気だし体力あるのよ、あの年頃のおばさんは」

 またしても大胆な発言わが妻かおりさん。

 大江湿原も雨。いっそう滑りやすくなった木道を慎重に歩く。

木道を行く
合羽の隊列がいく 帰りの大江湿原

 午後2時頃、沼山峠に到着。すぐに出発するシャトルバスに乗り込む。満員。

 御池駐車場。帰るときに1000円払う。峠道をスイスイと下って、キャンプ場に戻る。

 戻ってびっくり。今朝はまったく人気のなかったキャンプ場に、テントがぎっしり。しかしながら我がテントがデンッと存在を主張しているスペースは、誰もいない。みな我がテントが邪魔になって、テントが張れないらしい。悪いけど笑ってしまった。ごめんなさい。

キャンプ場
向こう側はきゃんぱーで一杯 こっち… ぼくたち邪魔ですか


 ちょっと気にしながら、また買出しに行く。今夜はキノコをいっぱい使った饂飩にする予定。JAの店にはいる。あいかわらず高いわねとブツブツ文句はかおりさん。

 買出しの後、JAのすぐ隣りにある、もうひとつの温泉「駒の湯」に行く。一人500円。「燧の湯」と比べると施設が若干簡素な感じ。100円の違いは大きい。ぼくもわが妻も「燧の湯」の方が好き。ところで、この駒の湯も燧の湯も、カンポの融資を受けた設備である。ちゃんと看板が貼ってあった。こういうことをしているから郵政公社というか郵便局は、ダメだと言われるんじゃなかろうか。なんで、同じような施設を、しかもこんな山奥のちいさな村に2つも作る必要があるのだろう。ぼくも郵政民営化には賛成だ。こういうホントに馬鹿みたいな融資をしている現実をみると、とにかくはやく民営化しないと郵便貯金がどんどんなくなっていってしまいそうで、危機感ばかりがつのってくる。

 文句はいろいろあったのだけど、ぼくらはヌクヌクと暖まってキャンプ場に戻った。再び夜になった。今日のビールは良く廻る。ぼくもわが妻も、饂飩をたっぷり食べて早々に就寝。翌朝までホントに良く寝た。ぐっすりだった。

その3に続く

 

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