□□ 03年7月20日
朝になると雨は上がっていた。朝食は事務局長作成。鍋の残り物&野菜ぶち込みラーメン。
カヌーを分解し荷造りする。それから今日のスタート地点まで運ぶ。キャンプサイト前の河原から出発しても良いのだが、多分、どう考えても半死は免れないような凶悪な瀬がすぐにある。それを避けて下流の美濃市内から出発するのである。
まず事務局長の車を到着地点の関市の河原に置いてくる。そしてもう一台の車で出発地点に戻り、河原でカヌーを組み立てる。美濃市内の河原である。すでに鮎釣りの釣師が幾人も川に入り込んでいる。
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ファルトカヌーを組み立てる面々
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汗びっしょりになってカヌーを組み立て、いよいよ出発の儀。
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で、いつもの出発の儀
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最初の流れだしは緩やかで、江戸時代の灯台など見ながら優雅に出発。タンデム艇にU氏と事務局長。三木隊員とぼくが続く。
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長良川の灯台
昔はここが船輸送の要所だったのか
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すぐに長い瀬に入る。周りは釣り師がいっぱい。そんなところで沈するわけにいかない。波をガンガンとかぶりながら懸命にクリア。
川がゆるやかになったところで、いったん岸に上陸する。本日2回目の難所があるのだ。
艇から降りてコースの下見。ここはテトラの堰堤。堰堤の左岸には魚道がくみ込んである。堰堤から魚道に入ればそのままジェットコースーターのようにまっすぐすすんで行くことができる。しかし、今回はその魚道は通らない。その横、落差およそ4メートル、ゴンゴンと白波を立てる長い瀬を行くことにする。
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瀬を降りてくるタンデム艇(中央左)
落差はおよそ4メートル
写真右手に強い波あり
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まずは露払いのぼくから出発。テトラを越えていよいよ流れ込みに入る。落差があるので進むべきコースがなかなか見えない。頭にあるコースに艇を進ませる。落下地点に入ったところで前方下の白波が見えてくる。
急速に落ちていく水流。水面から舳先がグンと上がる。盛り上がる波によって艇が右に傾く。舳先が落ちると同時に、こんどは艇は左に傾ぐ。上下動とロールを繰り返しながら大きな波を2回、3回とかぶる。目の前は真っ白になる。
艇が上下に大きく揺れたあと、艇が静かになる。クリアした。およそ70メートルくらいの瀬だった。ココロの中でガッツポーズ。岸につけて、後続の三木隊員。タンデム艇に乗ったU氏と事務局長を待つ。
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瀬をクリアして流れていくワタシ
すでに顔はニンマリ
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みな、難なくクリア。
ここまで来ておよそ1時間半。腹が減った。昼食にする。あたりはすっかり晴れて太陽が肌をチリチリと焼く。暑い。川鵜が飛んできては水にもぐっている。
再出発。しばらく川鵜など見ながら下っていくとゴウゴウという瀬音が聞こえてくる。船を降り下見。
がくんと下ったところから流れが左岸に突っ込んでいる。流れは左岸を埋めるテトラにぶち当たり、急激に右に曲がっている。あのテトラにぶち当たる直前に艇を右に向けるような技量はぼくには無い。ひとまずテトラ直前までの急流を下る。
昨日の旋回練習が役立った。テトラの直前で右岸に艇を着岸。テトラの部分だけライニングダウンし再び乗船。しかし、このとき上流ではどでかい事故が起きていた。
ぼくらが下った瀬と平行している浅瀬のコースを取ったタンデム艇。岩に座礁してしまった。流れに対し船体が垂直になったからどうしようもない。ピタリと岩に張り付いて停止。悪いことに流れを受けたまま上流に向けて横倒し。水が船体にじゃんじゃん浸入。ゴンゴンと流れ来る水圧によって、バキバキバキ。竜骨(ファルトボートの背骨)をへし折られてしまったのだ。
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フ船尾の竜骨をへし折った
U字のフレームの奥の骨が左に曲がって
しまってます
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よれよれで下ってくるタンデム艇。しかし何故かU氏は楽しそうである。ぼくと三木隊員は再び船に乗る。雨が降り出す。
タンデム艇は前方をよれよれと進んでいっている。他人事ながら心配である。しかし、そこは百戦錬磨の事務局長の舵取りである。多少の波をかぶりつつも安全地帯を縫うようにすすんでいっている。
こちらも雨に打たれながら進む。前方遙か、長い瀬が見えてきた。大きく左に曲がっていく流れである。遠くにでかい波が2重3重に立っている。どうやらそこが流れの芯である。なにもしないでいると、そちらに吸い込まれていく。あの波に飲まれたら沈する!
いつになく心臓がバクバクしてきた。アドレナリンが駆け巡っている。とにかく逃げる、左へと逃げる。右側を漕ぐ!漕ぐ!漕ぐ!
ところがすでに流れに乗った船体はどんどん右の波に向かって突っ込んでいく。こうなったら逆に突っ込むしかない!漕げ!漕げ!漕げ!
ドバァァン!頭から波を受けた。船首が水に突っ込む。ウッヒャァア!どすごい!負けるか!船体が右に持ち上がるのを懸命に腰で支える。2度、3度と上下動してクリア。ヤッタ!またしてもガッツポーズ。
急旋回して一旦、中州につける。
ハアハア、ゼイゼイ。疲れる〜。着岸。事務局長がひとこと。
「いよいよ最後の難所です、ココロしてど真ん中へ突っ込んで行くように。コースは他にもあるが、今日はあの狭いトコロに真っ直ぐいくしかないのです」
下流を眺める。どでかい岩が左右に鎮座。そのど真ん中は確かに狭い。狭いコースの両側には白波。コースをはずれて岩にぶち当たれば船もろとも大撃沈。船も無傷ではいられない。安全航行できそうな岸近くには釣師が何人も竿を出しており、あの岩と岩の間以外船の行き場は他に無い。はたしてあの狭いところに突っ込んでいけるか。行けばどうなる、もはや退けない、行くしかない。
すでにアドレナリンが体内に充満しているぼくは、真っ先に手を挙げ、哨戒艇の役目を果たすべく出発した。気分はしかし特攻艇である。ぼくが沈すれば、後発隊は安全策をとるのは自明。それで良い。ここはすすんで身を捧げよう。いくぞ!岩山、待っていろ。釣師のみなさん、見ていてね。チンしたらミンナできっと助けてね。
まず停泊中の中洲から上流に向かって進む。逆流を利用して急旋回、と思ったら意外の流速。艇は横向きのまま流されていく!
いかん!、早く艇をまっすぐに立て直さないと、コースに乗れない!
なんとか舳先を修復。流れの芯を探す。などといっている間もなく、前方に落ち込み発見。この落ち込みというのは水面に隠れた岩が水を持ち上げ、大きく波打っているところ。上流からはなかなか発見できない。カヌーは隠れ岩に乗っかり、落差のある落ち込みに舳先を突っ込み、安定を失いコロリと転げてしまう。意地の悪いカヌー泣かせな難所なのだ。
うわっ!こりゃいかん!まともに隠れ岩に乗っかるぞ!ヒョイ。乗った。うひゃ!ドン。下に落ちた。あまりにまともに乗ったせいで、艇はそのまま着水した。ラッキー!
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隠れ岩をクリアして突き進むワタシ
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やれ漕げそれ漕げ
進むコースは手前の岩とその奥に突き出ている岩の間
写真で見るとなんだか平板な感じ
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さて漕げ、やれ漕げ。波に負けないように漕げ!そして最後の岩場に向かう。白波が強くなってくる。しかし、意外にも大きくない。見掛け倒し。左右の岩はでっかいが、波は小さい。そのままスルリとど真ん中を抜け出て瀞場に進入。本日のゴール!。
後続の三木隊員も見事完走。その後ろ、へろへろのタンデム艇が白波にもまれつつ下ってくる。タンデム艇のバウ(前席)には緊張感の無い麦藁帽子のU氏。半そでの肌着とともに異国情緒タップリである。
そうして順々に到着!ありがとう!粗沈協会万歳!
実に充実の4時間。だんだん瀬に対する恐怖感もなくなってきつつある。次はどんな流れになっているのか楽しみになってきて、いよいよ深みにはまりつつあるボク。
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サイトに戻ってビール、ビールでにっこり
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キャンプ地に戻り、夜は別働隊が合流して、大人数で焼き肉とビール。昼間の疲れが出て10時に就寝した。夜、また雨が大量に降ってきたが、ほとんど気にせず寝てしまった。