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□□  03年10月12日(日)

 朝になると、雨は上がっていた。川の水位も上昇していない。しかし、空は曇り、なんだか怪しい。今年はいつも雨にたたられる。まいったなあ。さて、どうしますか。事務局長の裁定を待つ。

「本日、もう少し様子を見る。しかして準備は滞りなく行うように」

 西の空がかすかに晴れてきた。ここでぼくらはようやく動き出す。終点の神座というところに車を一台運ぶ。そして出発地のキャンプサイトに戻る。キャンプサイト前の河原でカヌーを組み立て、いざ出発だ。

 水が、ものすごく綺麗である。夏に行った長良川と同じくらいの透明度。いままで何度か大井川にやってきたが、この川の水がこんなに綺麗だとは知らなかった。

 しかし、水位が低い。すぐに船が動かなくなる。調子よく進んだな、と思うまもなくザザッと座礁。そんなことを2、3度繰り返す。そのたびに船から下りてライニングダウン。

 何度か繰り返す。面倒になる。また、浅瀬だ。このまま進んじゃえ。パドルを杖のようにして川底を掻きながら進む。およよ。また川底に引っかかった。あれれ、船尾が流れるぞ。ありゃりゃ。流れに対して船が垂直になっちゃった。ザザザッ。船はまるでスキーの横滑りのようになって川を進み始めた。こりゃいかん。でも、あと2メートルも進めばヨドミにいけそう。いいや、このまま行っちゃえ。ズリズリズリ。

 ズリズリと船は流れていく。身体は傾く。バランスをとりながら横倒しにならないように腰に力を入れる。かすかな振動。川底のひっかかりがはずれ船はよどみに浮かんだ、…が、その瞬間。船は川底から湧き上がるエディ(逆流)に揉まれた。船が急に旋回する。あっ、いかん!思わず体が傾き、ぼくはパドルで水を掻いた。しかし、パドルが水にスウゥと吸い込まれ、そのままぼくの身体も水底へ吸い込まれた。ボジャッ、ウゲゲッ!

あんなトコロで沈しちゃいました

 ブハーッ! なんで、こんなところで沈するのでありましょうか。まったくもって判りません。と、いうようなまことに平々凡々なところ。よどみであります。波の無いところであります。吸い込まれました。これが粗沈といわずして、なにが撃沈でありましょう。轟沈でありましょう。

 ちなみに、こういう逆流している場所が危ないということは知っておりました。だから体が傾き、パドルを水に突き刺そうとしたときも、頭の隅っこで、こっちじゃない、反対側にパドルを刺さなきゃ!という考えはありましたが、すでに本能的に体が動き始めたところでありました。

こんな静かなところばかりじゃない

 全身水浸し(あたりまえか)となりはしたものの、迷いは吹っ切れました。どうせ濡れてしまったこの衣装。このさき、雨が降ろうが滝に落ちようが(いや、落ちてはいかん)、このままずっと進むのだ。

 そこから先もなんどか歩きを余儀なくされた。浅瀬では歩き、細くなった瀬は軽快に下っていく。

水がホントに綺麗で

 ところが下流にいくにつれ、次第次第に瀬の流れがきつくなってきた。岸に激突した流れが直角に曲がっている。水の量が少ないだけに細くなった瀬は狭く波も高いように感じる。何本かそういう瀬を過ぎた。面白くてぼくの身体にはアドレナリンが十分いきわたっている。

 また雨が降り出した。川に平行して走る大井川鉄道を蒸気機関車が走ってくる。ぼくらを見つけた機関主が汽笛を鳴らす。乗客がみんな身を乗り出してぼくらに手を振ってくる。がんばれよー。と声もかかる。ぼくらも手を振って返答する。

雲が低くたれ込め、時々雨が降ってきた

 また狭い流れ。岸沿いを激しく上下動して流れる水。その上に乗って滑るように落ちていく。前方に岸から延びた木の枝。避けられない。絶対突っ込む。頭を低くして通過しようとしたが、枝は激しく頭にぶち当たった。枝を弾き飛ばした。ヘルメットを被ってきてよかったと心底思った。ヘルメットには5センチくらいの傷跡が残った。

 一昨年、初めて下ったとき撃沈したテトラの瀬。豪雨で流れが変わっている。しかし、一部別のテトラが顔を出し、流れを飲み込んでいる。あの中に船を突っ込みでもしたら、ほとんど生還は不可能だ。徒歩で避ける。

 前回、不覚にもエディに取られて操縦できなくなった場所。河原で遊んでいた家族がぼくらの下るのを見て駆け寄ってくる。ここは難なく通過。発電所の放流地点手前の岸壁もギリギリのところをすばやく漕いで通過。放流点から少し水が増える。おおきく蛇行しながら進む。

 ゴールの神座に到着したとき、また雨が降ってきた。ボートを分解して撤収する。すべて道中、ことも無く。いやいや、ホントはかなり危ないところもあった。しかし、面白かった。祖沈だけは余計だった。でも、これも学習。

 撤収後、スーパーで買い物。今日のメインは坦々麺とビールだ。

サイトに戻ったら少し晴れた、でも…

 キャンプサイトに戻り、乾杯。あたりが暗くなる頃、焼酎に切り替え。ぼくは坦々麺を作る。しかし胡麻を買い忘れ、結局台湾ラーメンになってしまった。ところが美味。美味い。満足。

台湾ラーメンのできあがり!

 その日も夜中に激しい雨。なんどか目を覚ました。


 朝。6時。早々に撤収を開始する。どうも雲行きが怪しい。7時に撤収完了。道の駅の休憩所で、コーヒーを沸かし、ヨーグルトと蓬饅頭を食べて朝食。着替え。

 8時過ぎに出発して、焼津の魚センターへ。ここでマグロの三色丼を食べる。お土産にカツオを買う。豪快な一本。ぼくは、そのカツオを持って再び東名高速を走った。途中、前も見えなくなるぐらい激しい雨が降ってきた。ぼくらがカヌーを漕ぐときは、いつも雨雲がやってくる。これはどうも避けられないみたいだ。

 

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