・・>秋 尾瀬沼へ(3)
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□□  翌日

 小雨。テントを打つ音。これがまた良いのだな。

 今日は気分もノンビリしている。しかし、ぼくらが朝食を作っている間にもキャンプ場の前の道を車が山にむかって猛烈なスピードで走っていく。昨日より遥かに数が多い。今日も雨。なのに昨日よりも人が多く、尾瀬は混雑するのだろう。難儀なことです。それくらい尾瀬は人気のスポットなのだなあ。

 ゆっくり朝ごはんを食べた。濡れたテントをたたみ、撤収を完了させ、いざ喜多方に向かって出発だ!と気合いをいれていると、わが妻かおりさんが言った。

「ねえ、もう一ぺん風呂入ってから行こうよ」
「いいけど、どっちの湯がいいの?」
「もちろん燧の湯がいい」
「いいよ、じゃ、行きますか」
「わーい、わーい、風呂だ風呂だ」

 朝からルンルンしているわが妻かおりさん。ぼくは、ここでのぼせてしまってはいけないと、半身浴で湯につかる。朝の露天風呂は静かでまた素敵だった。

 さて、一路会津道を北上して喜多方に向かう。車も信号も無い道。快適だ。

 およそ3時間で喜多方に到着。テキトーな駐車場に車を入れ、目指すはぼくの好きなお店(検索エンジンにかからないように名前は書きません)。

 日曜日ということもあって、町の中は、ラーメンマップを手にした観光客で一杯。それこそ有名店と呼ばれるトコロは長蛇の列。長蛇が長蛇を生んでいる感じだ。

ラーメン屋
有名店はすごい行列です 奥は左側にもっと続いてます


 ぼくの好きな店は違う。10年くらい前にここへ来たとき、地元の人に教えてもらった。行列なんてできてない。誰も目に留めないようなお店。でも美味しいものは美味しい。

 かおりさんが「ホントにいいの?」と、不安そうに店を覗き込む。大丈夫。絶対美味しいから。さあはいりましょ。

 その店。15人も入れば満員になるほどの小さい店だ。ぼくらが行ったとき、それでも10人くらい入っていて、ぼくはびっくりした。知っている人は知っているみたいだ。すぐにラーメンを注文。厨房には若奥さんひとり。忙しく立ち回っている。

マイフェバリット
ぼくの大好きな店です あえて名前は書きません


 昔来たときは、おじいちゃんとおばあちゃんが切り盛りしていた。ホントに美味しいラーメンだった。

 さて、今日のラーメン。あの時と変わってない。見た目は同じ。ちょっと醤油の香りが少なかった。昔はもっと匂いがプンと立ち上がっていた。油がトロトロになるまで味のしみこんだばら肉チャーシュー。これは美味かった。ツルツルとしてしっかり噛み応えのある麺。これも美味かった。

ラーメン
ぼくの好きな醤油味です チャーシューも美味かった

 ふう、やっぱり美味しかった。満足した。

 ぼくは厨房の奥さんに声をかけた。

「10年くらい前にこちらにおじゃまして食べたラーメンが忘れられなくてまたきました」
「ああ、それじゃあ、その頃はおじいちゃんとおばあちゃんがやってました」
「今もご健在ですか?」
「二人とも3年ほど前に亡くなりました」
「そうですかぁ、今日も美味しかったです」
「またきてください」

 美味しいです。でもこれはぼくの個人的な主観です、あくまで。だから万人が美味しいと思うかどうかは判りません。その証拠に行列店ではありません。ガイドブックにも小さくしかでてないと思います。だからぼくの秘密のお店です。今度行ったときも行列なんてできてないでほしい。でも、行列できるくらい繁盛していてほしい。複雑な気持ちです。

 さて、満足したぼく。コーヒーなど飲んで、帰ろうかということになったのですが、せっかくだからもう一軒。てなことで、某有名店の真向かいにある、聞いたこともないような、知らない店の行列にならんでしまいました。早そうだったから。それだけの理由。

 しかし、予想に反し相当待たされて(待たされた理由は、店の段取りが悪くてなかなか客をさばききれていないことが判明)ようやくラーメンを注文。

 その味は行列店「坂内」と同系列の塩味。それはそれでなかなかの味。かおりさんは結構気に入った模様。ぼくの趣味とちょっと違うけど、まあ、いいか。

 お土産ラーメンを買い、もう、腹いっぱいということになって、東京へ向かう。東北道を一目散。午後10時に家に到着。子供たちにラーメンを作った。

 ゆっくりとした2泊3日の旅。面白かった。美味かった。放電した。満足しました。


 

 

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